だいだい書庫

長文を書きたかった時の観劇感想のための書庫です

ミュージカルJtRの世界の話

ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」の世界の救いは、ポリーだった。

ソロ曲も、アンダーソンとのやりとりもとても良かった。

酔っ払わなければやっていられないことがあまりにも多すぎた社会の中で、必死に生きていたこと。

アンダーソンに、「この悪夢を終わらせるために力を貸そうか」と言える力を持った人であったこと。

自分のことも、同じ街で生きている同じ境遇の者たちのことも、思いやれる人であったこと。

アンダーソンが手に持つ花を自分への贈り物と信じて疑わなかったこと。

髪に花を刺した自分を見て「綺麗だ」と言ってくれるアンダーソンに、心から嬉しそうに笑ったこと。

死んでもなお、アンダーソンが贈った花を手放さなかったこと。

ポリーは最期まで花を握りしめていたけれど、アンダーソンがポリーを抱き上げた瞬間に、その手から薔薇の花はこぼれ落ちていってしまう。

 

ポリーがポリーでいてくれたことが、あのホラーな世界*1の唯一の救いだった。

アンダーソンは、あの後どうするんだろう*2

*1:物語のジャンルがホラーですごく良くできた作品ならそれだけで楽しかったんだけど、キャラの造形とか演出とかそもそもの設定とか、なんか色々受け入れられない感じが満載だったので、そういう意味でもある。あの物語に対する違和感は山ほど出てくるのだがこれを語るのもしんどい。曲はよかった。曲は好きだった。

*2:今のところまだ松下アンダーソンしか観ていないのだが、加藤アンダーソンもやはり観るべきだよなあ。